6- きりざい丼の果て
豪雪地帯である南魚沼の「京」へ到着し、店へ入った瞬間......タツオの動きは止まった.......。
なんと、上司であるコバオが、きりざい丼を頬張っていたのであった。コバオが美食家であるのは、タツオも知っている周知のこと。
事実、タツオがグルメに興味をもったのも、コバオの影響があった。
この状況にタツオは完全にフリーズしてしまったが、コバオは幸いにもタツオの存在に気付いておらず、足早に店の端っこのコバオから一番遠い席へ向かった。
コバオの背中を見れる席なので、タツオは安心して、きりざい丼を頼んだ。
コバオはきりざい丼を食すとすばやく店を出て行った。
とその時、徐に振り返り、「ニコッ」とした笑顔でタツオを見て、そのまま立ち去った。
タツオは、完全に凍りついた。コバオは、分かっていたのだ。自分の存在を........
タツオの席にきりざい丼が運ばれてきた。きりざい丼特有の臭いがして、これがまたたまらない。決して、臭いフェチではないタツオであるが、食べ物の臭いには一種のエクスタシーを感じてしまうのであった。
「いただきます」とニコッと笑顔で、発した後、きりざい丼を食べ始めた。とにかく美味しい。納豆と漬物の絶妙なハーモニー。豪雪地帯伝統の食べ物を豪雪の季節に食べる喜び。これ以上の幸せはないとそうタツオは思っていた。
きりざい丼の味を堪能しながら、南魚沼の歴史・風土に思いを馳せ、この至福の時も堪能すること。これがタツオ流の出張の締めである。
きりざい丼も食べ終え、お茶を飲みながら会計をしようとしたその時、タツオの隣の席で、なんと...........
7- 南魚沼バンザーイ
お茶を飲みながら会計をしようとしたその時、タツオの隣の席で、なんと...........
キャベジン・オタ・ジョーンズがきりざい丼を食べ終えようとしていたのです。状況が掴めず、再びフリーズするタツオ。
そして、隣できりざい丼を食べ続けるキャベジン・オタ・ジョーンズ。
この絵は、筆舌に尽くしがたいものでした。
そんな中でも、全く動けないタツオ。食べるキャベジン・オタ・ジョーンズ。
とりあえず、おそるおそる席を立とうとしたその時、彼女と目が合ってしまった。その瞬間はほんの一瞬でも、タツオにとってはとてつもなく長く感じた。
目をそらすことができないので、タツオは思わず「ニコッ」と、彼女に微笑んだ。すると、彼女も「ニコッ」と、笑顔で返してくれた。
単なる笑顔のキャッチボールで、一瞬で二人は心が打ち解けたように、会話を始めた。
内気なタツオも、自分でも驚くくらいに、口から言葉が次から次へと出てきた。
彼女もグルメで、日本全国のB級グルメを食べることが趣味で、時間を見つけて出かけているようであった。この南魚沼には彼女が通っていた大学があり、今日は急に懐かしくなりふと訪れ、久しぶりにきりざい丼を食べようと思ったことなど、色々とお互いの話しをした。
タツオも、B級グルメや趣味のミニ四駆のことなどをしたが、特に盛り上がったのは共通の趣味である映画の話であった。
タツオのオススメの映画は「Before Sunrise」で有名な「Before」シリーズで、彼女もその映画は好きであった。この映画は登場人物が基本的に2人で、2人がお互いの話や色々な意見を交わす中で惹かれ合っていくというもので、タツオの中での一番の名作であった。
彼女のオススメは「孤島の王」という映画で、今から100年前に存在した孤島にある少年院が舞台のもの。彼女の話を聞いてて、好奇心がそそられる映画であった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、もう終電の時間近くになっていた。このまま彼女といたいという気持ちと明日の仕事のことを考えると。。。。
タツオは、思い切って彼女に提案した。
8- 鶴齢でカンパイ
タツオは、思い切って彼女に提案した。
「この後、予定なければ、日本酒でも付き合ってくれませんか?もっと色々とお話したいので」
タツオはニコッとしながら、彼女を誘った。
すると、「是非!」という言葉が彼女から笑顔とともに返ってきた。
早速、次の店へ移動し、二人は南魚沼の地酒鶴齢でカンパイした。
彼女は、学生のときから鶴齢が好きで、よく飲んでいたので、懐かしいと何度も口にしていた。
タツオはこの極寒の南魚沼で、このままどうなるのかふと不安になった。もちろん、終電はなく、泊る所もなく。
そこで、彼女に今日はどこに泊るのかそれとなく聞いてみた。
すると「今日の宿はない」という意外な言葉が返ってきた......
タツオのジェントルマン魂に火が付き、とりあえず彼女のホテルだけは確保しないといけないと思い始めた。ものの、再び彼女とカンパイをした。
彼女に、ホテルを予約するので、今日はそこに一人で泊ればと提案したら、快諾してくれた。
近くのホテルに電話したところ、一部屋だけ空きがあった。
彼女にそれを伝えたところ、タツオはどうするか聞かれたが、僕は別のホテルを取ってあると笑顔で嘘をついた。
彼女をホテルまで送っていくために、タクシーを一台呼んだ。
9- トイレへの道
彼女をホテルまで送っていくために、タクシーを一台呼んだ。
彼女は、トイレに行くと言って席を立った。
タツオが目にした後ろ姿は、秋葉原駅のホームでいつも目にする姿であった。颯爽と歩く姿は、どこで見ても素敵であった。
ただ、いつもと違うのは、彼女はもう他人ではないということ。
これから、秋葉原駅で会えば、挨拶できるし、話もできる。そう考えると思わず笑顔になっていた。
もしかしたら、彼女と結婚するのかもなどと、とんでもなく話が飛躍してしまうものの、いつも悲観的な想像ばかりしているタツオにとっては、自分自身びっくりするくらいに前向きになっていた。
これからの秋葉原駅でのホームが楽しみだ。と独り言を連発していた。
こんな前向きになれた自分がすごい好きになれたし、こんな自分に変えてくれた彼女にも感謝をしていた。
そんな前向きなことを考えてると
彼女がトイレからまだ戻ってきていないことが気になった。まあ女性だから、仕方ないと思い、しばらく待つことにした。
しかし、30分経っても、一向に戻ってくる気配がない。もしかして、倒れてるのかも....
不安がよぎり、店員さんに声を掛けてみた。
10- 走馬燈
キャベジン・オタ・ジョーンズが突如と姿を消してから、もう1ヶ月が過ぎようとしていた。
あの出来事はいったいなんだったのか、タツオは理解できずにいた。
魚沼での夢のような出来事。彼女がトイレに行ったまま戻ってこなかったこと。
すべてが現実だったのか、夢だったのか。自分でも解釈できないまま、時は過ぎた。
あの魚沼で、彼女がトイレから戻ってこないので、女性店員さんに声を掛けたところ
僕には、信じられない返答が返ってきた。
「このお店には、お客様はお客様一人だけですよ。お客様も最初から一人で来店されましたよ」
女性店員は、純朴な笑顔でそう答えた。
タツオは声を失った......「いったい何なんだ...」。そう心でつぶやく以外は何もできなかった。
ホテルへの送迎タクシーが到着し、タツオはキャベジン・オタ・ジョーンズのために予約したホテルへ向かった。
だが、腑に落ちないことがある「そもそも、俺は誰の名前で予約したんだ....」。
確かに、タツオはホテルを予約した。しかし、予約には少なくとも"名前"が必要だ。
タクシーがホテルに到着し、不安ながらもフロントへ向かった。
すると、フロントスタッフから「ヨピ タツオ様、お待ちしておりました」と最高の笑顔で唐突に告げられた。
11- ホテル In ワンダーランド part1
タツオは、フロントスタッフに案内されるがままに、エレベーターに乗り込み、スタッフは最上階のボタンを押した。
といっても、エレベーターのボタンに階数表示はなく、スタッフはただ一番上にあるボタンを押したに過ぎない。
エレベーターの扉が閉まったかと思うと、すぐに扉が開いた.....
タツオは、「誰かが、エレベーターに乗り込もうと開くのボタンを押した」のだと思った...
と、その瞬間スタッフが「ヨピ タツオ様、最上階へ到着しました。」と開いた扉を手で押さえながら言った。
「おいおい、嘘だろ....1秒もエレベーターには乗ってないぞ...」とタツオはまた心の中でつぶやいた。
タツオは、まるで金メダルの表彰式のように、飛びながらエレベーターを降りた。飛びながらエレベーターを出る瞬間に、一瞬真っ暗になり
廊下に足が付いた時、あたり一面が明るくなった。周りを見渡したタツオは本当に最上階に着いたのだと理解した。
1階とは全く景色が違っており、長い一本だけの廊下がどこまでも奥に伸びていた。
「俺の部屋はどこだ?」タツオは訳が分からなくなっていた....
すると「ヨピ タツオ様、部屋はこちらです。」とスタッフが声を掛けてきた。なんとそこは、さっきエレベーターがあった場所であった。
もうタツオは、少々のことでは驚かなくなった。内心は、どうにでもなれとそんな気持ちであった。
案内された部屋の扉を開けると、そこには、なんとメリーゴーランドがあった。メリーゴーランドのBGMは
「ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調0p.13 「悲愴」-第2楽章」であった。あまりに暗く、タツオは笑うに笑えなかった。
この曲がタツオの脳裏に、ある記憶を呼び戻してきた.......
12- ホテル In ワンダーランド part2
この曲がタツオの脳裏に、ある記憶を呼び戻してきた.......
しかし、ある美しい夜景が見えたかと思うと、朝日とともに川が映る.....
「ここはどこなんだ」、タツオは自問自答した。
スタッフは、そんなタツオをよそに、「ヨピ タツオ様、メリーゴーランドへどうぞ」と、メリーゴーランドを停止させ、深々と頭を下げ、タツオに乗るように促した。
タツオは、ふと目の前に止まった青い馬にまたがった。すると、今度のBGMは、カノンであった。美しい音色が部屋中に響き渡った。
タツオは目を閉じながら、この美しい音楽に魅了されていた。
そして、目を開けると一転、車のクラクションのなる大通りの真ん中にタツオはいた。メリーゴーランドの馬が、バイクに代わっており、しかも、タツオはバイクの後ろの席に座っていた。あたりは、日も落ち、夜のようであった。それにしても、車の通りも多いが、それ以上にバイクの数が多い。タツオはここに来たことがあり、また、これと同じシーンを経験したことがあるような気がした。だが、思い出せない。
「あ、危ない...」、バイクが車に衝突しそうになった瞬間、目を開けると再びメリーゴーランドの馬にまたがっていた。車のクラクションは、またカノンに代わっていた。だが、少しロック調のカノンのようだ!
もともと、カノン好きなタツオであったが、タツオをカノン好きにさせたのが、あの国であった。
人口は1億人を超え、人口の平均年齢hが27歳程度の活気あふれた国.......。しかし、名前が出てこない.....。
11- ホテル In ワンダーランド part3
人口は1億人を超え、人口の平均年齢hが27歳程度の活気あふれた国.......。しかし、名前が出てこない.....。
タツオが、必死に記憶を辿っていると、突然「ルルルー、ルルルー」と呼び出し音がなった。だが、メリーゴーランドの馬の回転スピードがいつも間にか早くなっており、ポケット携帯を取り出せない。手を放すと馬から放り出されそうになり、馬の首にしがみついていた。なんとか、携帯を取り出し、電話に出たところで、「プツッ」と電話が切れた。。。。。
このとき、タツオは、”あの国”をついてに思い出した。そう、それはベトナムであった。ベトナムには、仕事で5回程度行ったくらいだ。なのに、なぜベトナムが恋しいのだろうか?やはり、あの女性との出会いがあったからだろう。。。。
それは、タツオが取引先と訪れた1軒のバーでのことであった。東南アジア圏では、ごくごく普通のバーで、バニーガールの恰好をした女性が多数いる。しかし、その中で、スラッとした出で立ちで、Kいチャイナドレスに身を包んだ3,4人の集団がいた。「あの女性たちは何者だ。。」とタツオは気になっていた。背も高く、客に媚びを売るわけでもなく、淡々と飲み物のオーダーを取っている。見た目はモデルに近い感じだ!
タツオは、覚えたての英語を駆使して、思い切って、そのKいチャイナドレスの女性の1人に声を掛けた。「Hi, How are you?, I am Tatsuo from Japan, Nice to meet you!」、すると彼女は笑顔で応えてくれた。その瞬間に、二人は言語を超えて、何か通じた感じがした。男女間での英語の意思疎通は非常に難しいため、あまり深く考えずに、タツオは、とりあえず、彼女に明日の夕方時間があるか尋ねた。
「Can I meet you at tomorrow evening?」
彼女は、何か英語で応えているが、バーのBGMが煩く、ヒアリングしにくい。そこで、タツオは紙とペンを用意し、筆談を始めた。
すると、どうやら彼女は、待ち合わせ場所を書いているようだ。しかし、タツオは住所をみても、全くわからない。
ただ、コーヒーショップであることはわかった。
「Trung Nguyen Coffee, 80 Dong Khoi Street, Ben Nghe Ward, District 1, Ho Chi Minh City 70000, Vietnam 」
だが、このままでは明日会えるか非常に不安だ。しかも、連絡先を聞かなければならない。彼女にLINEを交換しようと伝えた。
「Do you have LINE?」
彼女は
「No 」
と答えた。そのとき、やはりと思った。LINEは日本以外ではあまり使用されていないと聞いたことがあったからだ!
そこで、Viberのことを思い出し、
「Do you have Viber?」と再び尋ねた。
すると彼女は
「Yes, I have」と返ってきた。
正直、日本で全く馴染のないViberをインストールしていてよかったと、タツオは心から思った。なぜ、Viberをインストールしていたかというとそれは、タツオの英語の先生のVickyがLINEではなくViberを使用していたからだ!
Vickyは、アメリカ人だが、アメリカではViberが主流のようである。タツオは、心の中で「Thank you, Vicky」とつぶやいた。
無事に、Viberの連絡先を交換したころ、黒い集団の一人が、彼女に声を掛けにきた。ヴェトナム語なので、何を言っているかわからない。
その後、時計が23時を過ぎたころに、黒い集団は店から出ていった。
12- ホテル In ワンダーランド part4
タツオ達も、バーを後にし、タクシーに乗り込んだ!
時計は、深夜12時を回っているというのに、人が多いし、交通量も多い。
いつものように、タツオの頭の中には、BGMが流れていた。
バッハ「G線上のアリア」である。
行き交う人波、日本では考えられないバイクの数。。。。。。。。。タクシーの窓越しに外を眺めながら、明日のことを考えていた。
彼女に会えるのだろうか?彼女は、約束のコーヒーショップに来るのだろうか?
タクシーがホテルに着いたようだ。
タクシーの扉が、開いた瞬間........
目の前は、あのコーヒーショップだった。時計の針は、18時を指していた。
タツオは、コーヒーショップに入り、席に腰かけた。すると、Viberにメッセージが入った。
Hong Vu からのメッセージであった。彼女からであった。どうやら、30分ほど遅れるようだ!
〜「愛の夢」第3番(リスト)〜
ふと、店内に厳かなリストの名曲が...............
タツオは、ヴェトナムコーヒーを飲みながら彼女を待った。しかし、頼んだヴェトナムコーヒーがあまりに濃い味過ぎて、びっくりしたが、コーヒー好きのタツオにとっては至福の味であった。
濃いヴェトナムコーヒーと店内の音楽、そして彼女を待つタツオ。タツオは堪らなく幸せであった。自分がここヴェトナムで、過ごす時間が宝物のように思えた。
その時、タツオは一人で笑っていた。いつの間にか、タツオは笑っていたのだ!こみ上げてくる笑いを抑えることができなかった。
そして、店のドアが開き、彼女が店に入ってきた。彼女は、すぐにタツオを見つけ、席に座るやいなや「I am sorry for late.」と言ってくれた。タツオは、「No problem, I have just arrived here!」と返答した。もちろん、タツオは30分以上前にはこの店にいたのだが。。。
タツオは彼女に、コーヒーを注文するよう言い、タツオにもオススメのコーヒーがないかどうか尋ねた。このような些細なやり取りもタツオには新鮮であった。
その後、映画、音楽、将来の夢などについて話をした。彼女の将来の夢は、看護師になって、海外で働くことであった。そのために、看護学校に通って、夜は学費を捻出するためにアルバイトしている。
そうこうしていると、彼女のアルバイトの時間が来たので、2人は店を出ることにした。すると、彼女がバイクでホテルまで送ってくれると提案してきた。タツオは躊躇うことなく、「OK」と答えた。もちろん、ノーヘルメットで彼女の後ろに乗り、ホテルまで約5分のドライブが始まった。タツオは産まれて初めて、バイクの後ろに乗った。しかも、ノーヘルメットで........。
しかも、ベトナムはバイク大国で、交通ルールなど全くない。逆走、強引な横入りなど当たり前。道路の真ん中でのUターンありなど、めちゃくちゃ。
だが、夜のベトナムは非常に綺麗で、ドライブは最高であった。
その時のタツオは、マネキン(映画1987年作)のワンシーンでバイクの後ろに乗るキム・キャトラルさながらであった。
*映画マネキンの名曲とともにどうぞ!
Hong Vuの後ろに乗りながら、タツオは色々なことに思いを巡らせていた。
かなりの奥手であったタツオが、なぜか英語だと臆することなく話せる自分がここにいることに驚いていた。
日本では、全くと言っていいほど、自分から女性に話すことなどできないのに、なぜ英語ならこんなに簡単に話すことができるのか、自分でも不思議であった。
そうこうしていると、ホテルに到着した。
13- ホテル In ワンダーランド part5
彼女との時間はあっと言う間であった。
楽しい時間はすぐ過ぎるということが、都市伝説でないことをタツオは初めて理解した。しかも、日本ではなく、海外のベトナムで.........
タツオは、日本という狭い島国で暮らし、そこでの価値観が正しいと思っていた。むしろ疑うこともなかった。
だが、この異国の地で、タツオの心に変化が出始めた。日本では、内気なタツオであったが、島国を出た瞬間、全く違う自分がいることを感じていた。
また、いつも笑っていることにも気付いた。これには、タツオ自身も驚きを隠せなかった。笑っている自分がいる。笑顔の自分がいる。。。。
そのことを思い出しているタツオもまた笑顔になっていた。
と、同時に頬を流れる冷たいものを感じ、タツオの顔はシワくちゃになっていた!
タツオが泣いたのは何年ぶりかさえも、覚えていない。ただ、嬉しくて泣いているのは初めてのような気がする。タツオは、泣きまくった......脱水症状になるくらい泣きまくった。
この涙で、タツオは自分が変われる気がした。もう今までの自分ではなく、新しい自分なれる。そう思えたし、不思議と自信があった。
その瞬間............
タツオは、メリーゴーランドに乗っていた.......しかもBGMは
あの伝説の名曲であるナウシカレクイエムであった。この幻想的な曲に合わせて、メリーゴーランドは回り続けた。。。。。。。涙を浮かべながらタツオはメリーゴーランドに乗り続けた。目を閉じて、生まれ変わる自分を感じながら!
そして。。。。。。。
13- ホテル In ワンダーランド Final
朝の秋葉原駅は、いつものように通勤ラッシュに包まれていた。ここ数年で、秋葉原も海外の旅行者が増え、雰囲気も様変わりした。その中に、一人で佇む男がいた。
その男は、秋葉原駅から遠くを眺めているようであった。まるで、その男だけ時間の動きが止まっているようでもあった。
その男の脳裏には、キャベジン・オタ・ジョーンズがいた。あの魚沼での夜にいったい何が起こったのか。そもそも、キャベジン・オタ・ジョーンズは実在したのか?
全てが謎であった。しかし、今となってはそんなことはもうどうでもいいことであった。
タツオは、色々なことを考えながら、改札を出ていった。
- THE END -