お笑いをライヴで!!

15- 秋葉原駅にて

タツオは、秋葉原駅で帰宅の途についていた。いつもと変わらない、穏やかな駅であった。穏やかと言っても、人で大混雑はしていた。これもまた、いつもと変わらぬ景色である。タツオは、この景色が好きであった。

 

営業の第一線で活躍しているタツオは、地方へ出張に行くこともある多々ある。その時、過疎化の進んだ街の夕方以降の道路のあまりの静けさになんとも言えない寂しさを覚えるのであった。このとてつもない寂しさに打ちひしがれ、ホテルの部屋で1人寂しく床に就く。
タツオは出張嫌いではないが、この地方都市での何とも言えない風景に触れるのが、少し嫌でもあった。

 

かつての日本は経済大国で、GDP世界2位で、アジアの最東端にある島国が、ここまでの大国になったことは驚きである。人口も1億人を超え、国として繁栄の時、絶頂を迎えていたのが、あのバブル時代である。バブル時代、またはバブル景気は、1986年(昭和61年)12月から1991年(平成3年)2月までの51か月間に、日本で起こった資産価格の上昇と好景気、およびそれに付随して起こった社会現象とされている。特に土地価格の上昇は凄まじいものがあり、一流企業勤務の会社員でさえも、都心から1時間以上離れた場所に家を買わなければならない状態であった。また、土地価格の上昇に負けじと上昇したのが、株式市場である日経平均株価が38,957円44銭をつけるなど、とんでもないことになったいた。日本中が、とにかく幸せだった、幸せそうに思えた。それが、バブル景気であった。
そして、バブル崩壊が訪れ、日本経済は「失われた20年」に突入することになる。
もちろん、永遠にバブル経済が続くわけもなく、いずれはこの狂騒は終わるのです。

 

水戸黄門の歌にもある通り、「人生楽ありゃ苦もあるさ」と同じなのかもしれません。日本の栄枯盛衰を如実に表しているのが、現在の地方都市である。人口減、高齢化、後継者不足、若者の地方離れなどなど。だが、その地方には日本人の忘れた姿があると言われているが、50年後、100年後も、日本は日本であり続けることはできるのか、タツオはふと考えた。

 

自分という存在の価値や意義など。少し深い話になるが、タツオは最近よく考えることがあるのだ。タツオはそんなことを考えながら、満員電車に揺られながら、家路についた。

 

16- 未知との会話 part-1

 

タツオの家族のことは誰もしらなかった。秘密にしている訳ではなかったが。。。逆に言えば、現代社会のひとつの特徴なのかもしれません。他人への関心のなさ......
近所付き合いもなくなり、隣人が誰かもわからなくなってしまったこの時代が呼び込んだ惨劇がこのあとタツオ達に襲いかかる。ただ、笑いだけが、その惨劇の救世主になれるのだと思う。笑うことこそ..........

 

タツオは、一人暮らしをしており、最寄駅からアパートまで徒歩20分ほどであった。雨の日などは駅に着くだけで、足元はベショベショに濡れており、会社のトイレで靴下を着替えるのが常であった。利便性を考えれば、もう少し駅近のアパートに引越ししたいものの、タツオは夜道を歩くのが好きなのだ!タツオは夜道を、ゆっくり歩き、60分かけて家に帰ることもある。この夜道は、タツオにとって世の中とは隔離された世界であったのだ。静寂に包まれたこの夜道がタツオの疲れた心を癒してくれた。
タツオはこの夜道で、一人笑いをすることがあるのだ。これは、タツオ得意の独り言からくるもので、タツオはこの夜道で、一日を振り返ったり明日のことを考えたりしているのだ。時には、将来のことも考えて、不安になったりもする。だが、タツオにとってこの夜道はなくてはなfらないものなのだ。仕事の都合で、夜道を通らずに帰宅することもあるが、その時は、なんか物足りない気分がタツオを襲ってくるのである。夜道は、タツオにとって生活の一部になってしまったのである。
おそらく、普通の人なら、この夜道は通りたくないはずである。

 

それくらい、街灯も人通りもない、暗ーい道なのだ。

 

確かに、タツオもなぜここまで暗く人影のない道なのかと不思議に思うこともある。しかし、タツオにとっては癒しの道であった。

 

17- 未知との会話 part-2

 

タツオは、目が非常に悪く、0.04くらいである。目が悪くなってからは、裸眼での測定がないため、実際の視力はもう何年も知らないのである。普段はメガネをかけているタツオであるが、夜は目も疲れているため、メガネを外して帰宅することが一般である。
メガネを外して、歩いていると普段見えないものが見えてくるのである。かといって、幽霊や化け物の類ではない。普通の木や葉っぱなどでさえも、風邪などの揺れで、まるで生を帯びているように思える。
タツオが、楽しそうに家路を急いでいるときに、ビクっとすることがある。それこそ、木や葉っぱなどが、生きているように思えて、タツオの前に突然飛び出してきたように見えるからである。
タツオは、そのとき、「ハッ」っと、後ずさりするものの、すぐさまそれが木や葉っぱであることがわかるのである。タツオは、目を休めるという意味でメガネを取るのが第一目的だが、「観たくないものをみないようにする」ためにメガネを外すこともあるのだ。
それは、この夜道をメガネをかけて帰宅しているときであった。タツオの目の前を、この世のものとは思えない「いきもの」がスーッと通り過ぎていったのを見たことがあったのである。これには、さすがのタツオも自分の目を疑ってしまった。「なんなんだ、あれは??」タツオは自問自答したが、もちろん、答えなどあるわけもなく。
タツオは、それ以来、メガネを外してこの道を通ることにしたのである。

18- 未知との会話 part-3

メガネを外して歩いていた時、ついに例の「いきもの」がタツオの前に現われたのだ。正確には、「いきもの達」という方が正しいかもしれない。
何かを追いかけているような感じであった。いや、何かに追われているようでもあった。

 

タツオは、とっさにメガネをかけた。「例のもの」をみようという一心で。また、ある意味で、メガネをかけて「例のもの」が嘘で会ってほしいという思いも込めて。
しかし、メガネをかけたタツオは、そのことを後悔した。

 

メガネの向こうに、正真正銘の「この世のもの」ではないものが見えた。
見た目は、動物のようでもあった。しかし、その大きさはもう動物ではなかった。正直、巨大であり、10mくらいもある大きさであった。
タツオくらいの大きさなら、一口で食べられてしまいそうな大きさであった。だが、彼らはタツオの存在に気付くことなく、足早に公園の闇へと消えていった。

 

5,6匹くらいの数はいたであろう「いきもの達」はどこへ消えていったのであろうか?あれだけの巨体なのに、足跡が残っていない........
タツオは不思議な感じとともに、この世の地殻変動、もしくは秩序の崩壊が起こったのではと背筋がぞ〜っとした。

 

その予感は見事的中していた。

 

想像を絶する恐怖が、タツオの背後に、迫っていたのだ!いや、全世界に迫っていた!

 

 

 

19- 北センチネル島.....

インド洋に浮かぶ北センチネル島は、インド領であるが、インド政府も干渉しないという方針を出しており、まったくの未開の地である。
もちろん、島の住民が話すといわれるセンチネル語を理解するものは島民以外にはおらず、あらゆる意味で外部との接触あどは不可能である。

 

過去に接触を試みた人はいたが、全て殺されたのだ。。。。。。

 

センチネル族は、3mを超える巨人族だともいわれている。これは、レムリア大陸という古代に存在したネフィリム族(神と人間との間に産まれた種族)の末裔とも言われている。
ただ、数千年もの長き間に外部との接触が全くないため、どんな文明なのかも不明である。
このセンチネル島を巡っては色々な情報が飛び交っていて、常に話題に挙がっている。地震、ハリケーン、豪雨などの天変地異が発生する度に北センチネル島が発生源ではないかと言われているくらいである。
何か神秘的な、しかし空恐ろしい雰囲気のある島であることは確かだ!

 

北センチネル島の山の深い奥には、洞窟があり、その洞窟の深く、深く.....さらに奥の全く光が届かない、まるで深海何千メートルくらいに匹敵するくらい静かで、光のない世界......。


そこに、とてつもなく大きな穴が開いていた。ここから、「いきもの達」が出てきていた。どこの世界とつながっているのか、どこから来たのかそれは誰もしらない。ただ、「いきもの達」は、人間界へ押し寄せてきていた。確実に....。


実は、センチネル族が、この「いきもの達」と激しい戦いを繰り広げていたのだ。センチネル族は、人間代表として数千年の長きにわたり、この「いきもの達」をセンチネル島から出すまいと戦い続けてきた。そんなことも知らず、単なる興味本位でセンチネル島を探索しようと冒険野郎が上陸を試みてきた。誇り高きセンチネル族は、自らの命を捧げ、人間界を守り通してきた。


だが、ついにそのセンチネル族の結界が崩れてしまったのだ。


その、「いきもの達」が人間界を食い尽くそうとしている。

20- ヘラクレス コバオ

JR山手線の外回りの最終電車が秋葉原を出発した。


隣駅の御徒町に到着し、上野駅に出発した瞬間に電車は急停車した。

社内アナウンスが流れた。
「ご乗車の皆様、ただいま、緊急停止を告げる信号を受信しましたので、急停車をしております。状況がつかめ次第、また安全が確認でき次第、すみやかに出発致します。」


タツオは、突然の電車の停車に驚きを隠せなかった。24時を越えた、最終電車で乗客はほとんどいないし、漠然と一抹の不安を感じた。

ふと、窓越しに外の景色を眺めたところ、遠くに電気の消えた東京スカイツリーが見えた。

と、そのとき、静かにスカイツリーが崩れ落ちるのが見えた....。スカイツリーの真ん中あたりから炎のような赤い光が一瞬だけ光線のようなものが光った。それから数秒くらいしてから、「ボッーン!」と爆発音のような音が聞こえた。電車は大きく左右に揺れた。


一体、何が起こったのか、理解できなかった。タツオが眺めた漆黒の夜の景色は、まるでお祭りのような明るさに変化した。そして、2回目の爆音がした。ものすごい風圧で、ついに電車の窓ガラスが破壊された。