笑いによるちょっと素敵で、ノスタルジックなストーリーをお届けします。
笑い - ストーリー
題名:お笑いで99.9%解決できる
作者:ふぁんでんふぉーへん・ばんず・じゅにあ
登場人物
ヨピ タツオ : 33歳のしがない会社員。趣味はミニ四駆のみ。
キャベジン・オタ・ジョーンズ : 無国籍の美女。
コバオ : ヨピ タツオの上司。元高校球児で甲子園優勝投手。甲子園の決勝の舞台でMAX170 km/h(しかもフォークボール)を記録したと言われている。
1- 秋葉原のホーム
月曜の朝7時、ヨピ タツオは秋葉原の駅のホームに佇んでいた。
タツオにとって、毎週月曜日の日課であった。出勤時間の秋葉原のホームは人混みでごった返している。でも、タツオにとっては、秋葉原の人は、密林のジャングルに生い茂る木々のようであった。
タツオは、このジャングルに身を潜め、ある人物を密かに探していた。身を潜めるには、「この木々」は最適であった。時計の針は、7時10分を指した、その時.........。
この密林を、颯爽と闊歩する" アマゾネス "のような女性。この女性こそ、タツオが毎週月曜日に探している人物だ。
タツオは彼女のことを「キャベジン・オタ・ジョーンズ」と呼んでいる。タツオが大好きなハリウッド女優の「キャベジン・オタ・ジョーンズ」からそのまま取ったものであった。
もちろん、この女性のことは何もしらない。知っていることは、背が175cmくらいあるということぐらい。ヒールを履いているので180cm以上はあり、この密林の中でも、一際目立つ存在である。
タツオは、背が165cmくらいなので、彼女はまるで手の届かない存在であるかのごとく、ただ見るだけの存在であった。
彼女に対して、タツオは何も特別な感情はなく、ただ見ているだけであった。ただ...
2- アメ横にて
タツオは、仕事帰りにアメ横にいた。ブラブラと一人で目的もなく、佇んでいた。
アメ横の人混みと秋葉原のホームのそれとは、同じ人間でも全く違う、別の言い方をすれば、対極にいるような人たちであった。
タツオにとってはそれも新鮮であった。「なぜ、アメ横の人たちの目は生きているのか?」、「なぜ、秋葉原の人たちの目は死んでいるのか?」、タツオはアメ横に来ると必ずこう自問する。
しかし、最近、アメ横の人たちを見ていると、いつも笑顔であることに気づいた。目が生きているということは、笑顔であるということなんだ。タツオはそのことに、ふと気がついた。目が死んでいる笑顔は見たことがない。でも、笑顔であれば目は生き生きとしている。そのとき、タツオの顔はいつの間にか笑顔になっていた。笑顔が出ることなど、本当に久しぶりだった。それと同時に、塩水が頬を通った。でも、顔には笑顔が溢れていた。曇り一つない、笑顔であった.........
3- 満員電車にてpart1
秋葉原のホームで、電車を待っているタツオには聞きなれた音楽をBGMに、人間ウォッチングに浸っていた。
「まもなく、電車が到着いたしまーす。黄色い線の内側にお立ち下さい。」
あくびする人、無言の人、表情のない人、スマホをいじる人、色々な人がいます。タツオはそのような人たちを見ながら、それぞれの人が背負っている運命に思いを巡らしてしまうのである。
この人たちは、「なぜ、ここのいるのか?なんのために生きているのか?」、タツオが得意な自問である。
その自問に対する回答は、決まって暗いものである。人に対して、悲観的に見てしまうのが、タツオの癖である。
映画もバッドエンディングが好きだし、ドラマ、小説、漫画もなぜかバッドエンディングを期待してしまうのである。
秋葉原駅に到着した電車はすでに満員状態で、扉が開くと、とんでもない恰好をした乗客を目にする。扉と乗客に押しつぶされた状態で、踏ん張っている。
しかも、その乗客の顔たるや、まさしく「命がけ」と表現するのが適切。しかも、オーバーリアクション......。
「この人は、なんのために満員電車に命がけで乗車しているのか?」、「命をかける価値があるのか?」、再びタツオの自問が始まる。無味乾燥うな自問である。しかも、自答は、極めて暗いものでもある。
そんな満員電車で、ふと目に入ってきたのは........
4- 満員電車にてpart2
そんな満員電車で、ふと目に入ってきたのは........、なんと「キャベジン・オタ・ジョーンズ」でした。
この命がけで満員電車に乗車している人がいる中で、なんと涼しげな顔をして、周りとは一線を画してしる出で立ち。
それはそれで、異様な感じでもあった。タツオはその姿を凝視しながら、得意の自問を開始した。
「彼女の生い立ちは、彼女の生活は....」、しかし、全く彼女のことについては、何も想像できないでいた。
タツオの頭はフリーズしていた。この人生初めての経験に対応できずにいた。
電車の中に生い茂る木々から顔を出す、「アマゾネス」こと「キャベジン・オタ・ジョーンズ」。彼女のスラッとした背筋、気品漂うスーツ姿、近寄りがたい雰囲気。もちろん、タツオも遠くから眺めるだけであった。
電車が駅に到着し、彼女は下車した。
タツオは、そのクールな後ろ姿を眺めながら「どうも」と全く意味不明な言葉を心でつぶやいた。
5- 魚沼のB級グルメ
今日は、久しぶりの出張で新潟にいた。冬の新潟は、寒く、雪も降り、神奈川出身のタツオには厳しいものであった。
しかし、タツオは新潟が好きであった。美味しい日本酒、お米、そして何より、魚沼のB級グルメの「きりざい丼」を食すのが、一番の楽しみであった。
「きりざい丼」は魚沼発のB級グルメで、最近大賞を取るなど注目を集めましたが、タツオはメジャーになる前からの大好物であった。
タツオの出張には、掟があった。出張の最終日には、地方のグルメを食し、最終便で帰途につく。今回は、越後湯沢駅で途中下車し、目当ての「きりざい丼」へ向かった。越後湯沢駅から少し離れて、タクシーで30分程度。
本日の目的地は、南魚沼の六日町のきりざい丼の「京」。京のきりざい丼の特徴はすべてが南魚沼産であるということ。やはり、地産地消は食の王道だと考えるタツオにとっては、どうしても食べたいのが「京」のきりざい丼。
豪雪の南魚沼の「京」へ到着し、店へ入った瞬間......タツオの動きは止まった.......。